Sunday, March 20, 2016

0083 プロカウンセラーの聞く技術 東山紘久 ★★★


著者の東山紘久さんは京都大学でながらく教鞭をとられた臨床心理学者です。本書は、プロのカウンセラーが現場で活用あるいは意識するべき31の「傾聴のテクニック」について説明している本です。僕もそれなりに臨床心理学者が書いた本を読んできましたけど、本書ほど具体的で、読んですぐに使えるという本はなかなかないと思います。

目次を読んでみるだけでその具体性の高さが分かると思います。例えば、わかりやすいものだけをピックアップしてみると、

01:聞き上手は話さない
04:相づちの種類は豊かに
08:自分のことは話さない
11:質問には二種類ある
12:情報以外の助言は無効
14:教えるより教えられる態度で
24:言い訳しない
25:説明しない
28:したくない話ほど前置きが長い

などは、目次を読んでいるだけでもハッとさせられます。

コミュニケーションの能力が、ビジネスパーソンにとってとても重要だということはよく認識されていると思いますが、ではコミュニケーション能力というのは、一体どういう能力なのか?よく顧客企業の人事の方とお話をしていると、新卒採用の基準で最も高頻度であげられる能力要件の一つがコミュニケーション能力なんですけど、ではコミュニケーション能力というのは、具体的にどういう能力なんですか?と伺うと規定できていないことがほとんどなんですよね。

単純に考えれば、コミュニケーションというのは情報のやり取りなわけですから、少なくとも「情報を押し出す能力」と「情報を引き出す能力」くらいには分解できそうです。そして本書は、徹底的に後者、つまり「相手から情報を引き出す」ためのスキルについて書かれています。

で、この「出す能力」と「取る能力」のバランスを考えてみると、今後はどんどん後者の重要性が高まるように思うんですよね。なぜかというと「学習」が非常に重要になってくるからです。知識やスキルがどんどん陳腐化する社会では、キャリアの全期間を通じて、どれくらい効率よく再学習できるかがその人の仕事人生の豊かさを決める重要な要素になってきます。で、学習というのは情報を「引き出す」ことで初めて可能になるわけですから、これは非常に重要だろうと思うわけです。

例えば現場を離れて久しい管理職が、最新情報のアップデートをしないままにリーダーとしてのオーソリティを維持できるかというと、これはとても難しい。裸の王様にいずれはならざるを得ないわけで、それを防ごうと思ったら、常に自分より若い人から意見や情報を引き出して再学習することが求められるわけです。

知識やスキルというものは、すぐに役立つものほどすぐに役立たなくなるという傾向がありますが、本書で学べる「傾聴の技術」は、読んですぐに役立つにもかかわらず、おそらく一生のあいだ、職場だけでなく家族やコミュニティの人間関係の改善や自分の学習に貢献してくれると思いますよ。

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