Saturday, March 5, 2016

0078 ディズニーランドが日本に来た! 馬場康夫 ★★


この本は大きく二部構成になっています。

前半は、ディズニーランドを御殿場の富士スピードウェイ近辺に招聘しようという三菱グループと、浦安埋立地に招聘しようという三井グループのプレゼン合戦の模様についての物語。後半は、三井グループのプレゼンを取り仕切った電通の堀貞一郎の「人と仕事」についての物語となっています。

三菱と三井のプレゼン合戦については、結果的にどちらが勝ったかを僕らは知っているわけですが、ディズニー幹部が日本にディズニーランドを作ることを検討していた1974年の時点では、早くからディズニーグループに対してモーションをかけていた三菱グループが、三井グループに一歩も二歩も先んじていました。その不利な状況を、どうやってひっくり返すか。そのために三井グループが仕込んだ数々の仕掛けが、前半の読みどころです。

このプレゼン合戦、結局は三井グループ+電通の圧勝に終わるのですが、それがどれくらい「圧倒的」だったのか、1974年に両者のプレゼンを受けるために来日したディズニー幹部側の行動スケジュールを確認してみるとよくわかります。

ディズニー幹部側の元々のスケジュールはこうでした。
12月1日 ディズニー経営陣来日
12月2日 各地に表敬訪問
12月3日 三菱グループのプレゼン一回目
12月4日 三井グループのプレゼン一回目
12月5日 三菱グループのプレゼン二回目
12月6日 三井グループのプレゼン二回目
後日、プランを検討し、最終決定。

ところが実際はどうであったか。なんとディズニー経営陣は4日の三井グループの一回目のプレゼンを受けたその場で三井と組むことを意思決定し、三菱グループの二回目のプレゼンは「聞く必要がない」とキャンセルされたのです。なんという屈辱・・・。

このとき、三井側のプレゼンテーションの指揮をとったのは当時45歳だった電通の堀貞一郎です。この堀さんという人が一筋縄ではいかないというか、本当にスゴイ人だったんだなあと思わせるエピソードがテンコ盛りで、本書の後半のエッセンスはこの堀さんの仕事術といっていいでしょう。

ディズニー経営陣は当然のことながら日本語を話せません。一方で堀さんは英語ができない。ということで、事前のリハーサルでは堀さんが日本語で計画を説明し、英語に堪能な京成トラベルの社員が通訳するはずだったのですが、プレゼンに先立ったディズニー会長テータム氏の「本来であれば我々が日本語を勉強してから来るべきところを申し訳ない」というお詫びに閃いた堀さんは、リハーサルを無視して、日本語に加えた身振り手振りでプレゼンを始めてしまいます。そのプレゼンのわかりやすさに感銘を受けたテータム会長は、わざわざ堀さんのプレゼンを一度止めさせ「日本語を勉強してから来るべきだったと言ったが訂正する。ミスターホリ、あなたの日本語はよくわかる」と感想を述べています。

堀さんの「しゃべり」は一種の芸術と言える領域にあったようです。1965年に始まって1990年に終了した日本テレビ系列の深夜番組「11PM」に映画紹介のコーナーがあったのですが、このコーナーを長らく担当したのも堀さんで、理由は「早い場面展開に合わせて話せる人が誰もいなかった」からだというんですね。

あるいは東京ディズニーランドのホーンテッドマンションの入り口に、天井の伸びる部屋がありますよね。あの部屋で流れる「部屋が伸びているのか、それとも諸君が縮んでいるのか・・・」というナレーションも堀さんの声なんです。このナレーションを吹き込むにあたっては、名のある俳優・声優を集めたオーディションが行われたのですが、どれもしっくりこないと悩んでいたディズニーの遊園地担当副社長のディック・ヌニス氏が「これ!この声だ!」と最終的に選んだのは、どの俳優の声でもなく、堀さんがインストラクション用に吹き込んだデモテープだったらしいんですね。

これで思い出したボイストーンという話です。2020年のオリンピックが東京に決まって日本中が沸き立ったのが数年前のこと。この時、IOCに招致のプレゼンを行ったチームのメンバーは世界最高と言われるプレゼンテーションのコーチを受けたそうです。で、これはそのメンバーの一人だった杉山恒太郎さんから聞いたんですけど、その際にコーチから徹底的に言われたのが「Find your own voice tone=あなたの声を見つけなさい」ということだったそうなんですね。

身振りでも流暢な話しぶりでも表情でもない、本当に強いプレゼンをしたければ「自分の声」を見つけろ、と。人にはそれぞれの「人の心に届く声のトーン」がある、それを見つけなさい、というアドバイスです。堀さんという人は、この「人の心に届く自分の声」を自分で見つけていたんだろうなあ、と。

すいません、思い入れがものすごくある本なので話がとっちらかってきましたが、いずれにせよ、企画をプランし、それを競合プレゼンテーションとして提案するということにある程度関わらなければならないという立場の人であれば、本書はいろんな刺激を与えてくれることと思います。

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