Thursday, March 3, 2016

0077 影響力の武器 ロバート・B・チャルディーニ ★★★


心理学の定番書籍はビジネスマンにとっても示唆深いものが多いですけれども、この本はその筆頭に挙げるべき本だと思います。ライプニッツ!でも心理学の本を複数紹介していますが、ビジネスパーソンから「読んで仕事に役立つ心理学の本を一冊だけあげろ」と言われれば、躊躇なくこの本をお勧めします。

人間がなぜ往々にして非合理的な意思決定、自分にとって不利な意思決定をしてしまうのか。欲しくも無い商品を買ってしまったり、まったく共感していない慈善団体に寄付してしまったり、自分とは異なる意見に賛意を表明してしまったりといったことは多くの人にとっても身に覚えのあることではないでしょうか?

本書は、そういった非合理的な意思決定、もっと直截に言えば自分にとって不利益になるような意思決定を採用するように仕向けるための人間心理のメカニズムを六つに整理して紹介している本です。これら六つの影響力が具体的に世の中のどのような産業・状況で用いられているかが解説されているのですが、「ああ、だからそうなってるんだ」という腹落ち感がすごい。

具体的に本書では次の六つの「影響力」を解説しています。
  1. 返報性   相手から先に何かをされると、お返ししたくなる
  2. 一貫性   一度引き受けると次の要求も受けやすくなる
  3. 社会的証明 周りがそれを受容していれば、応じやすくなる
  4. 好意    親しい人の要求は断りにくい
  5. 権威    正当な権威者の要求は断りにくい
  6. 希少性   その対象が少ないものであれば、応じやすくなる

僕は広告代理店からキャリアをスタートして、その後コンサルティングに来たわけですが、両者は「説得が仕事のコアである」という部分で共通しています。説得という行為は相手の意思決定に影響を与えるという行為ですから、こうやってリストを眺めてみると、やっぱり全部使っているよなあと思いますね。ただ個人的には説得よりも共感をつくるほうが大事だと思ってます。説得されても人のエネルギーレベルって高まらないんですよね。やっぱりコトが起きるには説得より共感が必要だと思います。とはいえ、すべての局面で共感に頼るわけにはいかないので、まあバランスが大事だというコトでしょうか。

まとめれば、本書には大きく「防御の面」と「攻撃の面」という二つの効用があると思います。

防御の面から言えば、こういった心理の影響力を販売や交渉に用いてくる営業マンや取引先を見極める力が付くということです。自分がなぜ今契約しなければいけないと思い始めているのか、合意しなければいけないと思い始めているのかについて、冷静な自己分析ができるようになることで、そういった非合理的な意思決定を避けることができます。

攻撃の面はその逆です。つまり、こういった影響力を知った上で、倫理や自分のポリシーに抵触しない範囲でこれをマーケティングや交渉に活用し、相手の意思決定を自分にとって有利に変化させるということです。先日出版した『外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント』のなかで、プロジェクトを取り巻くステークホルダーとのコミュニケーションの仕方について相当量の紙幅を割いて解説していますが、それらのノウハウのベースは本書に基づいています。

初出が古い(初版は1987年)こともあって、必ずしも最新の心理学研究が反映されているわけではありませんし、テープレコーダーが比喩に使われてたりと、時代を感じさせる部分も少なくないのですが、「心理学とビジネス」の交差点のど真ん中の本として未だに必読本といっていい本だと思います。

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