Tuesday, March 1, 2016

0045 デザインのデザイン 原研哉 ★★★



描く哲学者、原研哉さんによる本です。本当に、佇まいの美しい本ですよね。

今日では「デザイン」という言葉はいろんな文脈で用いられていますよね。すでに出来あがったモノに対して表層的なお化粧をして見栄えを整える、といったニュアンスで使われるケースもあれば、本書のような、一種の「考え方の態度」といったニュアンスで使われることもある。本書は「デザイン」という言葉に名を借りた「考え方」についての本だと思っています。

ビジネスの世界で「考え方」ということになると、わかりやすいのは論理思考やクリティカルシンキングといったスキルで、まあこれはこれで確かに有用なんですが、世界の問題を考えたり解いたりするにあたっては、これだけだとやっぱりうまくいかないし、白黒つけることでかえって問題がややこしくなったりする。そういう時に、異なる思考のモード、問題に向き合う佇まいや姿勢を別に持っているということは、しなやかに仕事をしていく上では絶対に武器になると思ってます。

ということで、では本書の効用を挙げるとすれば「原研哉の目を通して世界を疑似的に見る体験ができる」という、もうそれに尽きるとおもいます。

悟りを求めて修行を続ける僧に対して、曹洞宗の開祖である道元は「遍界不曾蔵(へんかい、かつてかくさず)」と教えました。大意としては「真理は隠されていない、あなたの目の前に常に開かれている。それが見えないのは世界の側ではなくあなたの側の問題だ」という意味ですが、この本を読むと同じものを見ていても、これだけ感じるところ、汲み取るところが違うものかと思い知らされます。

本当に、最初のページから最後のページまで、超一流のデザイナーの視点の置き方や考える角度に触れて「ハッ」とさせられることの連続なのですが、中でも僕がガーンときたのは第五章の「欲望のエデュケーション」です。

センスの悪い国で精密なマーケテェイングをやればセンスの悪い商品がつくられ、その国ではよく売れる。センスのいい国でマーケティングを行えば、センスのいい商品がつくられ、その国ではよく売れる。商品の流通がグローバルにならなければこれで問題はないが、センスの悪い国にセンスのいい国の商品が入ってきた場合、センスの悪い国の人々は入ってきた商品に触発されて目覚め、よそから来た商品に欲望を持つだろう。(中略)
香港で食べる中華料理は美味しいが、東京のそれはさほどではない。それがシェフの技量の問題であれば、腕のいいシェフを香港や中国から招けばいいし、事実そういうことも行われているはずである。しかしこのギャップはなかなか埋まらない。なぜなら、問題はシェフではなく顧客だからである。(p137より)

こういう角度で日本企業のマーケティングを考えた人って少ないし、こういう「角度」はやっぱり論理思考という刃物を使っても、切り口を見出せないと思うのですよね。

デザイナーによるデザインの本と思っていたら本当にもったいない。内容はどんな仕事に従事しているビジネスマンにとっても示唆深いものだと思います。

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