Tuesday, March 1, 2016

0037 決断の本質 マイケル・A・ロベルト ★★★



優れた判断能力を持っている頭脳明晰な個人が集まったとして、必ずしも組織の判断能力が個人の判断能力に応じて高まるわけではない、という組織論の世界ではよく知られる定説を、様々な事例を用いて説明している本です。結論として言いたいことに、それほど新規性があるわけではないのですが、その説明のために用いられている事例がムチャクチャ面白い、というのが本書の第一の価値かと思います。

ざっとあげれば
1:ベテラン登山ガイドによるエベレスト登山での遭難
2:スペースシャトルチャレンジャー号の爆発事故
3:ピッグス湾事件とキューバ危機
4:ジャック・ウェルチの改革
5:ノルマンディー上陸作線
といった事例が紹介されています。

この、一つ一つの事例の説明、つまり「優秀な人が集まって、どうしてこんな決断をしてしまったのか」という構造的な要因への踏み込みがとても勉強になります。

一般に、優れたリーダーというのは優れた判断能力を持つ人だと考えられています。しかし、本書を読むとその認識がとても危険だということがわかります。判断能力に優れたリーダーと自他ともに認める人であるからこそ、歯止めがきかずに破滅的な決断を行い、その決断に従って組織を動員してしまうことができるからです。ヒトラーを思い出してください。あれほどの悲劇を起こし得たのは、ひとえに傑出した判断能力を持つリーダーへの盲信によります。

では、優れた意思決定はどのようにして可能になるのか?詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、最も重要なコンセプトをあげれば、リーダーは意思決定の結果ではなく、プロセスにこそ意を砕く、ということになるかと思います。どのような人を意思決定のプロセスに巻き込み、反対意見や違うものの見方をいかに活発に表出させるか、という点こそが重要だということです。つまり「空気に議論を支配させない」のがリーダーの仕事だということです。では、そのために何をすればいいのか?是非、本書を読んでほしいと思います。すべてのビジネスパーソンに目を通してほしい名著だと思います。

No comments:

Post a Comment