Tuesday, March 1, 2016

0030 J.S.バッハ『無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ』 シグワルト・クイケン ★★★



バッハの「無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ」です。演奏はシグワルト・クイケン。バッハは「無伴奏〜」と名のつく曲集を上記のチェロ、そしてこのバイオリン、そして他にフルート用に三つ書いていますが、一般にこの「無伴奏バイオリン〜」が、音楽性という点では最も深みがあると言われていて、僕もその通りだと思います。

これは無伴奏チェロについてのページでも説明したことですが、弦楽器を「無伴奏」で弾く、ということは音楽の三要素であるリズム、メロディ、ハーモニーのうち、最後のハーモニーを出せないということを意味します。ハーモニーは音楽を色彩を与える大事な役割を担いますから、したがって、この曲を聴くに当たってはハーモニーを出せない弦楽器を無伴奏のソロで演奏しながら、どうやってバッハが色彩感を出していくかというところが聴きどころになるかと思います。このあたりの説明はバッハの無伴奏に関するページを見てもらえればと思います。

まあ教科書的にはこのような説明になるんですが、個人的な感覚を書かせてもらえれば、この曲には非常に形而上学的なところがあって、なんだか聴いていると耳で哲学するようなところがあります。中でも、これは多くの人がそう指摘すると思うのですが、やはりというべきか、シャコンヌが圧倒的だと思います。バイオリン一梃だけの、たった十分ほどの曲なのに、星が生まれてから滅びるまでの時間の流れを感じることができます。今回、これを書くにあたって改めて聞いてみたのですが、本当に「カッコイイ曲」だと思います。

この動画はクイケンではなくクレーメルの演奏になります。こちらの方が感情の抑揚をストレートに出していますね。個人的にはクイケンの演奏の方が好きですが、客観的にはこちらの演奏も大変な名演だと思います。

Gidon Kremer "Sonatas & Partitas for Solo Violin" J. S. Bach



演奏者のクイケンはいわゆる古楽器演奏の第一人者です。古楽器とは、作曲者が曲を作った当時の楽器ということです。実はバロック時代と現代では楽器はかなり違っているんですよね。例えば当時の弦楽器の弦はガットでしたが現在はナイロンと鉄線になっています。もちろん後者の方が強く大きい音が出るのですが、悪く言えばデリカシーのないキラキラした音になります。この盤では、クイケンはガット弦を使って弾いています。擦過音の大きい独特の音で非常に情報量が多い。恐らく録音がいいんでしょう。

一方で、現代楽器を使った演奏を聴いてみたければシェリングの盤がおすすめです。


こちらも大変な名盤で、通常「無伴奏バイオリン〜」を聴くならまずはシェリングを勧める人が多いのですが、先述した通りモダンバイオリンを使った演奏なので良く言えばキラキラした、悪く言えば若干デリカシーにかける音になります。まあ好みの問題で、どちらを買っても長く聴ける愛聴盤になるのは間違いありません。


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