Tuesday, March 1, 2016

0017 EQリーダーシップ ダニエル・ゴールマン ★★



1995年に出版され、世界的なベストセラーになった本です。あまり知られていませんが、著者のダニエル・ゴールマンはもともとはヘイグループのコンサルタントですね。昨今では脳科学の知見をマーケティングや組織開発の領域に活用しようという動きが活発ですが、本書はこういったトレンドの嚆矢と言っていい本ですね。

さて、本書のオビにはいみじくも「できる上司」と「ダメ上司」の決定的な違いとは何か?とありますが、なかなかうまいコピーを考えたものだと思います。皆さんなら、両者の違いをどう説明しますか?

ライプニッツ!店主は月曜日から金曜日まではコンサルタントとして、顧客企業のリーダーシップ開発や組織デザインを手伝っています。顧客企業のリーダーシップ開発をお手伝いする際に、よく用いられる手法の一つにワークショップがあるのですが、このワークショップで僕がよくやるエクササイズの一つに「ベストボス&ワーストボス」というものがあります。このエクササイズでは、参加者に、これまでのキャリアの中で接した「最高の上司」と「最悪の上司」を思い出してもらい、彼らのどういう「行動」や「発言」が「最高」だったのか、あるいは「最悪」だったのかを書き出してもらいます。

で、もうすでに数十社でこのエクササイズをやっているのですが、どの会社でも必ず出るのが「最悪の上司」による「感情的になって怒鳴る」とか「不機嫌で声をかけにくい」というビヘイビアです。これはつまり「感情をコントロールする」というのが、信頼されるリーダーにとって重要なスキルだということを示唆しています。

しかし、なんで感情をコントロールするのはそんなにも難しいのでしょうか?

本書を読むとその理由が生理学的なものなのだということがわかります。詳しくは本書を読んで欲しいのですが、簡単にいえば、普段は理性=「知」に制御されている脳が、危機的な状況になると本能=「情」にハイジャックされちゃう、ということです。

どうしてそういうことが起きるのかというと、答えは「食べられちゃうから」です。かつて、僕たちの祖先は、目の前の茂みからいつトラやライオンが飛び出してくるかわからない世界に暮らしていました。実際にトラやライオンが飛び出してきたら、理性なんかに頼って思考している時間はありません。本能の命じるままに脱兎のごとく駈け出さないと「食べられちゃう」わけで、つまり僕らの脳の回路は危機的状況になると「理性=知」をパイロット席から蹴っ飛ばして「本能=情」に操縦を任せるように「生き残るために」できているのです。

少し専門的な話をすれば、「情」をつかさどるのは脳の中でも辺縁系と呼ばれる、比較的早期に形成された部分です。一方で「知」を司るのは脳の前頭前野部で、こちらは進化の過程の最終段階で発達したことがわかっている。普段は言動を前頭前野部に制御させているリーダーでも、危機的な状況になると辺縁系に回路をハイジャックされ、辺縁系の命じるままに怒鳴り散らしたりモノを投げたりしてしまう・・・つまり、感情的になって怒鳴り散らして部下の人望を失う「残念なリーダー」になりたくなければ、いかに辺縁系が起動した時に、それに気づいて前頭前野部での制御に徹しきれるかどうかにかかっている、ということです。リーダーシップのクオリティを高めれば「脳を鍛えろ」ということで、なんとも身も蓋もない話なのですが、確かに説得力はあります。

本書の優れている点は、「じゃあどうすればいいのか?」という点について、それなりに現実的な対処法を示しているということだと思います。自分の感情に少しムラっ気がある、あるいは感情にムラっ気のある人を上司に持っているという人は目を通してみると色々と気づきの得られる本かと思います。

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