Tuesday, March 1, 2016

0016 エンデュアランス号 シャクルトン南極探検の全記録 キャロライン・アレグザンダー ★★★



日本ではあんまり知られていない人ですが、アーネスト・シャクルトンの名前を知らない人は欧米人には居ません。それくらい有名な人なんですけど、ではなんでそんなに有名なのか。

この本の表題にもなっている「エンデュアランス号」は、南極探検でシャクルトン隊が乗船した船の名前です。表紙は同行した写真家による写真ですが、帆をたたんでいるのに傾いていますよね。流氷に閉じ込められてしまっているんです。その後、このエンデュアランス号は流氷の圧力によってバキバキに寸断されてしまい、シャクルトン隊は移動のための、そしてなにより帰還のための手段を失います

1914年のことですから通信手段もままなりません。結局、本国の人たちは「シャクルトン隊は全滅した」と思ってみんなあきらめていたわけですが、おっとどっこい、なんとシャクルトン隊は、一名の死者を出すこともなく、一年八ヶ月にわたって南極大陸を生き延び、ついには帰還します。

この本は、その探検の模様を、隊員の募集から帰還してその後まで、著者であるアレグザンダーが丁寧に記録したものです。この冒険に関する本としては、隊長である当のシャクルトン自身が書き残したものもあるのですが、僕はルポルタージュ的に冷静な記録に徹したこちらの本のほうが、むしろシャクルトンの凄みが伝わってきて好きです。

すごいリーダーは往々にして自分のすごさをわかっていないことが多い。シャクルトン自身が書いている探検の記録はそれはそれで面白いのですが、組織論やリーダーシップ論の考察のネタとして、この探検を分析的に読むのであれば、こういう「乾いた記録」のほうがいいように思います。

有名なのは、シャクルトンが隊員を募集するために掲載した新聞広告でしょう。


~極めて危険な冒険に参加する男子を募集~
報酬は僅少。環境は酷寒。暗黒の日々。絶えざる危険。生還の保証なし。
ただし成功の暁には名誉と賞賛を得る。
アーネスト・シャクルトン


記録によれば、この新聞広告に五千人を超える応募があったということです。それで思い出したのですが、かつて、3Kというのが忌避される仕事のキーワードとして盛んに言われた時期がありましたね。たしか「キツイ、キタナイ、キケン」で3Kだったと思いますが、上記の新聞広告なんて究極の3Kですよね。マイナス50度の酷寒、命の保証なし、一年間風呂入れない・・・・という。そういう仕事に応募が殺到したということは、人のモチベーションや生きがいが、それほど単純な関数ではないのだということを僕らに教えてくれるように思います。とにかく、組織論、動機付け、リーダーシップといった観点で、本当に「生の学び」を与えてくれる稀有な本だと思います。

あとは写真ですね。表紙の写真もそうですけど、同行したフォトグラファーによるすばらしい写真がたくさん使われているので、読んでいてものすごく臨場感があります。

組織論、リーダーシップ論について、多くの学びが得られる本だと思いますので、強くお勧めします。

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