Tuesday, March 1, 2016

0014 稲盛和夫の実学 稲盛和夫 ★★


京セラは他に類を見ない独特の管理会計システムを構築して成功し、さらに同様の仕組みをJALにも導入して成功させ、このシステムが製造業だけでなくサービス業においても有効であることを証明しました。

京セラが採用しているこの独特の仕組みは、今日では主にアメーバ経営として知られています。で、この本はアメーバ経営のなんたるかについて説明された本ではありません。そうではなくって、アメーバ経営というシステムを生み出すに至った、稲盛さんの思考のプロセスが描かれている本です。

稲盛さん自身は会計の専門家ではありません。なので京セラが少しずつ大きな会社になっていって、そろそろ会計の専門家を雇おうということで雇ったわけですが、この専門家が言うことが稲盛さんにはよくわからないわけです。

よくわからないというのは、用語ではなくロジックのことです。

「なぜ、そうするのか?素直に考えればこうするべきではないか?」
「いや、それは変です。会計では普通はこうやって考えるんです」
「変でも構わない。経営の要請からいったら会計の考え方こそ変だ」

こういったやり取り・・・というか衝突が、棚卸し資産の計算とか減価償却率の設定とか、ありとあらゆるところで起きるわけです。その過程で読者は二つの重大な学びを得ることになると思います。

一つ目は、稲盛さんが徹底的にゼロベースで考えているということです。トップダウンと言ってもいい。会計では普通こう考えるという専門家の意見に対して、経営上の要請からすればこうではないかと反論する。例えば、顧客のオーダーで作ったセラミック部品が余ったとすると、これは在庫になり期末には棚卸し資産として計上されることになります。ところが稲盛さんは、顧客のためにオーダーメイドしたのだから転売はできないわけで、商品価値がない以上、資産に計上するのはおかしいと、こう言うわけです。実際には売れないものを売れる在庫として計上していれば、これは経営状況を見誤る重大な錯誤につながりかねない、というのが稲盛さんの指摘で、読んでいれば全くその通りだと思わざるをえません。このトップダウン思考の凄さが一つ目の学びです。

二つ目は、権威に盲従しないという知的態度です。先述した通り、稲盛さん自身は会計の専門家でもなんでもありません。ところが、採用した会計の専門家に食ってかかるわけです。専門家のもの言いに対して「そういうもんかな」「まあ専門家がそう言ってるし」で済ませない。これはイノベーションを起こすリーダーに共通して見られる特徴です。専門家はイノベーションを止める人、素人がイノベーションを起こす人ですから、素人が専門家に食ってかからない組織ではイノベーションは起きません。この本を読むと、それぞれが専門家の縄張りを作って、お互いに侵食し合わないようにして心地よい状況を作っていてはダメなんだな、ということが身に沁みます。

表題には「経営と会計」とありますが、単に会計の本だと思って読む、あるいは読まないのは勿体無い。メインにあつかっているトピックは会計ではありますが、全般を通じているのは1:トップダウン思考の重要性、2:権威に盲従しない個人のリーダーシップで、ここにこそ本書の本当の学びがあるように思います。

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