Tuesday, March 1, 2016

0010 エンデの遺言 河邑厚徳 ★


エンデとは、あのミヒャエル・エンデのことです。そう「モモ」や「果てしない物語」の著者である、あの人です。ということで、当然ながら本書は、ファイナンスの本でもなく、ましてやビジネス書でもありません。だけれども、財務や会計を学ぶのであれば同書はぜひとも目をとおして欲しいと思うのです。

ファイナンスには、なんというか、独特の「甘い匂い」があって、一度その仕組みを理解してスキルを身につけると、ある枠組みでしか世界を見られなくなるようなところがあります。コンサルティング会社を志望してくる若い子なんかと話していると、企業価値評価をやって会社を売ったり買ったりするようなことをやりたい、というような子がいるんですが、これはこれで気持ちとしてはわかるんだけど、僕はやっぱり気持ち悪いなあと思っちゃうんです。ちょっと不謹慎な言い方かもしれませんが、カルト宗教に似ているんですよね。世界を単純化したがるわけです。

オウム真理教なんて、とてもわかりやすいですよね。ステージを小乗→大乗→金剛乗と設定して、修行の時間とお布施の額の関数によって順番にステージが上がっていくという、受験勉強とまったく同じ仕組みを宗教に持ち込んだことで、多くの偏差値エリートはその「単純さ」に引き寄せられていっちゃったわけです。

この本は、僕たちが考えることさえしない「お金についての当たり前」を、「本当にそれは当たり前なのでしょうか?」と問いかけてきます。その代表的な問いが「金利は、なぜプラスなのでしょうか?」という問いです。社会心理学者の小坂井敏晶先生は著書『社会心理学講義』の中で「学問で最も重要なことは新しい知識の蓄積ではなく、当たり前だと普段信じて疑わない常識の見直しです」(同書p19)と言っていますが、まさにエンデは、普段僕たちが「当たり前だと信じて疑わない」お金に関する常識について、それは本当に当たり前なのか?正しいことなのか?という問いを突きつけてくるのです。本当に頭が良いというのは、こういう人のことを言うんだろうな、とつくづく思いましたね。

読んですぐに使えるスキルを身につけられるわけでもないし、何か人生が豊かになるような楽しさがあるわけでもないのですが、本当に深く考えさせられる本です。本書の効用について考えれば・・・うーん、自分が奴隷であることを知った者はもはや奴隷ではない、という言葉になぞらえれば、自分が貨幣制度という「人が作った仕組み」の奴隷になっているということを知ることで、奴隷ではなくなる・・・ということでしょうか。

うーん・・・なかなか良い紹介の仕方ができないのですが、ここまで読んで興味を読んだのなら是非本書を手に取ってみてください。

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