Tuesday, February 16, 2016

0003 競争優位の戦略 マイケル・ポーター ★★


こちらも有名な本ですね。経営戦略には剣術と同じような流派があります。大きく二分論で語れば、ポジショニング学派とリソースベースビュー学派があり、これはいわゆるポジショニング学派の基本テキストと言っていい本です。ポジショニング学派というのは、乱暴にまとめれば「企業の収益性は取引先や競合との相対的な立ち位置によって決まる」という考え方です。典型的な考え方としては、売り上げの大半を一社の顧客に依存する企業よりも、多数の顧客に分散依存している企業の方が交渉力が強い、といったものです。

対するリソースベースビューは「企業の収益性はその企業が持っている内部的な競争資源による」という考え方をします。こちらもまあ、そりゃあそうだろうね、という感じですね。思考の着眼点が違うんですね、前者が非常に高所から俯瞰的に見ているのに対して、後者は低所から局所的に見ているわけです。

そういう意味では、ちょっと極端なものの見方をしているのですが、それでもこの本をお勧めするのは、当書で述べられている5フォースやバリューチェーンといったフレームワークを知ってほしいから、ということでは必ずしもありません。そういったフレームワークを手っ取り早く学びたいということであれば、ライプニッツ!のお勧め書籍にもなっているグロービスMBAシリーズの「経営戦略」がお勧めです。本書はあまりにも冗長で、こう言ってはなんですが訳もこなれておらず、かなり苦しい読書になると思います。

この本をお勧めする理由は二つです。

一つ目の理由は、「俯瞰的に思考する」ということの、一つのベンチマークが本書だと思うからです。先述した通り、本書は「個別企業の競争力を考えるに当たっては、その会社が属している業界だけ見ていてはだめで、川下や川上の業界、あるいは代替関係にある業界まで俯瞰して視野に入れろ」と指摘しているわけで、これを「戦略を考るには顧客・当社・競合=3C」を考えればいい、と指摘した大前研一先生の『企業参謀』と比較すれば、はるかに広い視野にたって考察していることがわかります。

二つ目の理由が、思考の緻密さです。本書がすごいのは、先述した「俯瞰の思考」における視点の高さ、視野の広さだけではなく、「俯瞰の思考」から導き出された示唆を現実に展開するに当たって、何がポイントになるのかを極めて具体的に検討している、という店で、言ってみれば「俯瞰の思考」だけでなく「地面の思考」もしっかりしているんですよね。

フレームワークは知っているか本書を読む必要はない、と考えてしまうのは勿体無い。本書の価値は、フレームワークそのものよりも、それを導き出す過程、あるいはそこから得られる示唆をアクションに結びつける過程でポーターが見せる「思考の粘り腰」を追体験することにこそある、と思います。

最後に、この本を読めば、同じポーターによる『競争の戦略』は読む必要はありません。内容的にはほぼかぶっていて、こちらの方がより広いトピックを扱っていますので。

Monday, February 15, 2016

0002 マーケティング22の法則 アル・ライズ/ジャック・トラウト ★★


成功する商品を横に並べてみると、あれ不思議、幾つかの共通項が出てきますね、という典型的な帰納法的思考によって紡ぎ出されたパターンを「マーケティングにおける22のルール」として紹介している本です。

僕がまだ電通に在籍していた頃は、有無を言わさぬ必読の書として推奨されていました。社員向けの推薦書リストというのがあったのですが、他の本については「なぜこの本がいいのか、どんな内容なのか」という解説があったんですが、この本だけは「読んでない人は今すぐに読んでください。電通社員としてやっていけません」と書かれていたのを思い出します。

論理展開も乱暴だし、専門家からすれば突っ込みどころ満載という脇の甘い本なんですけど、それでもやっぱりこの本を読んでほしいと思う理由を挙げるとすれば・・・本書を読むと、マーケティングというのは、徹頭徹尾、「顧客の認識」への働きかけでしかないんだ、ということがわかる点でしょう。

ビッグデータをはじめ、テクニカルな分析に流されがちな昨今においてこそ、マーケティングにおける情緒面の重要性を再確認させてくれる本です。

Saturday, February 13, 2016

0001 問題解決プロフェッショナル 齋藤 嘉則 ★★★


最近はやたらとタイトルに「マッキンゼー」と入った本が出版されていますが、率直な感想として、それらの本のほとんどは読むに値しない駄本だと思っています。マッキンゼーの出身者が書いた本には、ライプニッツ!でも一押ししている大前研一先生の『企業参謀』や安宅和人さんの『イシューよりはじめよ』など、名著がたくさんありますが、それらのほとんどが書籍のタイトルに「マッキンゼー」と入れていないのは、きっと内容に自信があるからなのでしょうね。

マッキンゼーは、新卒入社や中途入社へのトレーニングが非常に充実していることで知られています。考えてみれば当たり前のことで、入社しても平均して二年程度で退社してしまう、という状況の中でコンサルティングの品質を維持しているということは、とりもなおさず、極めて短期間の間に一人前のコンサルタントを育てている、ということでもあります。筆者も見せてもらったことがありますが、大変優れたテキストだと思います。

で、この本は、筆者が知る限り、最もマッキンゼー社内でのトレーニング資料に近い内容になっています。題名の示す通り「問題を解決する」というスキルについて、コンパクトかつ精密に説明していて、僕自身がコンサルタントになりたての頃、最もお世話になった書籍の一冊と言えます。多くの「マッキンゼー流○○」を読んで時間を無駄にするくらいなら、本書を何度も繰り返し読んでほしいと思います。